「子どもが独立して広い家に住む必要がなくなった」「自然のある場所に引っ越したい」など、セカンドライフの始まりに住み替えをする方も少なくないですよね。そのタイミングで選ぶ新居は、“年齢を重ねることで実感する不便を解消する工夫”や、“趣味時間を楽しめる工夫”があると、より心地良く暮らすことができます。今回は、そのような工夫をリノベーションで実現した事例をご紹介していきましょう。

キッチンの吊戸棚のように、高い位置の収納は、年齢とともに使いにくくなってきますよね。そこで、こちらのキッチンカウンター下に設けた棚のように、簡単に出し入れできる位置に収納があると便利です。

また、シニア世代の事故原因で、家庭内の転倒・転落が多いことからも、なるべくそのような危険の少ない環境にしておくのが安心です。

実は、オープン棚であることもポイント。出し入れしやすいのはもちろん、何が入っているか一目で把握できるので、お茶やお菓子などをストックする場所にすれば、お買い物の計画が立てやすくなります。

日本家屋の玄関には「上がり框（かまち）」という段差があります。靴を履いたり脱いだりする時や、玄関先で話をする時など、腰掛けるのにちょうど良い場所ですが、マンションの場合は、この段差がほとんどありません。ほぼフラットな玄関になることで、つまずく危険性が少なくなる一方で、年齢とともに、靴を履きづらくなってしまうこともあります。

そこで玄関に設置すると便利なのが、ベンチです。座ってゆっくり支度できるので、靴を履く時にバランスを崩してしまう心配もありません。お買い物から帰ってきた時に、一時的に買い物袋を置くこともできます。

こちらは、洗面室にベンチを設けた事例。入浴前後の着替えは、腰掛けながら行えば転倒の心配がありません。特に入浴後は、血圧の変動でふらつきや目まいが起きることもあります。今は大丈夫でも、このような設備があらかじめ備わっていると安心ですね。

シニア世代になってくると、負担に感じるのが「家の掃除」。中でも、掃除機が重く感じて、使うのが億劫になってしまうことが多く、フロアワイパーなど軽いアイテムで掃除するようになった、ロボット掃除機を購入した、という声も少なくありません。

掃除の負担が減るのは良いことですが、フロアワイパーを何となく壁に立て掛けておいたり、ロボット掃除機の置き場に困ってリビングの片隅に置いておいたりと、定位置に困ることも。掃除グッズも専用の収納スペースがあると、家の中がスッキリしますよね。

こちらの物件では、リビングの一角に「お掃除ステーション」を設置。フロアワイパーなどが入る縦型の収納の下に、ロボット掃除機の充電スペースをつくっています。さらに、家事動線を意識し、リビングの中でもキッチンに近い位置に設置しているのもポイントです。掃除グッズをわざわざ玄関近くや別室まで取りに行くのは面倒ですが、掃除したい時にサッと取り出せたら気軽にキレイにできますよね。

キッチン近くに、マグネット壁をつくるのも便利です。お買い物のメモや病院の予約票などを、目に入るところに貼っておけます。その他にも、カレンダーで家族の予定を共有したり、写真を貼ったりと、思い思いの物を自由に貼れるスペースとして活用できますよ。

セカンドライフを豊かにしてくれる趣味の時間。充実感を得たり、リラックスできたりと、日常をより楽しくしてくれますよね。そんな趣味に没頭できる、自分だけの専用スペースを設けてみませんか？個室を趣味部屋として使っても良いですし、ユーティリティルーム（多目的室）や、室内窓などで仕切られた一角などを、専用スペースとして使うのもおすすめです。

 
▼リビングとつながる位置に、ユーティリティルーム（多目的室）を。デスク上には、自由にレイアウトを決められる有孔ボードを設置しています。

▼リビングの一角に仕切られたスペースをつくりました。室内窓を設けることで、明るく圧迫感のない空間になっています。

最後に、リノベーション事例から少し話がそれますが、ガーデニングや家庭菜園が趣味であれば、「専用庭」付きの住戸を選ぶのがおすすめです。マンションによっては、地植えができない等の規約がある場合があるものの、バルコニーに比べると、ある程度の広さがあり、日当たりの良い専用庭は、好きな草花や野菜を育てる楽しみが広がります。窓を開けた時には、緑や花が目に入り、自然を感じながら心地よく暮らせますね。